のぐちよ日記

映画、本、アート、日々のことをちまちまと。

ひとり京都ふたたび。

わたしにとって京都は、ひとりでも何度も来たくなる場所である。全然飽きないのが不思議だ。



遠い異国に行くにはまだ十分ではないからいけない、けど手っ取り早く非日常にトリップしたい。そんなときにうってつけの場所である。しかも、三連休なんてとれたときには、真っ先に行き先に思いつく場所だ。


仕事の疲れもあって、三連休初日は京都に夕方到着。勿体無い時間の使い方だけれど、疲れてるのにさらに疲れることはしたくない。時間の無駄遣いが許されるのも、ひとり京都の特権だ。

前回同様、ひとり京都を捗らせてくれるのは、祇園四条駅から徒歩10分、清水寺からは15分ほど、建仁寺の向かいにあるホテル、ザセレスティンホテル京都祇園だ。わたしにとってはちょっと奮発したお値段の宿泊料である。

基本素泊まりなので、ご飯のおいしさは不明だが、立地良しの上に、すぐ足が疲れるわたしには必須の大浴場があるところが気に入っている。

窓の眺めも良い。


前回ひとり京都をしたときに見つけた、大好きなお店、「もしも屋」に今回も来店。
ひとりでフラッと入る雰囲気のお店に、あらかじめ一人予約は恥ずかしい。が、ひとり京都ではぜったいに外せないルートなので、仕方ない。



こちらのお店、Googleマップで泊まるホテル周辺の晩御飯を探していたときに見つけたお店で、ジャンルが「無国籍料理」と書いてあったのに惹かれ予約して行ったのが始まり。今回で3回目。

とりもものレモングラス焼きや、牡蠣の昆布焼きなど、エスニックなのか和食なのか、いやもはやどっちでもいいか、うまいし。となる貴重なお店。野菜の味が濃く、どれも脂っこくないのでたくさん食べても全く飽きないのが最高。
基本店員さんは放置なので、一人で黙々と食べていられるのも、好きなところである。

たらふく食べてよく眠り、
次の日は早く起きて、ともだちと待ち合わせ。

今回会った大阪在住のともだちとは、コロナということもあり、3年ぶりの再会。この度ともだちが結婚をしたとのことで話が聞きたくなり、会うことになったのだった。

建仁寺を通り過ぎて、目的地へゆっくり向かう。

前回は夏の京都にきたが、今回は真冬の京都。
朝は頬が風に刺されるくらい冷たい。
けれど、空には雲ひとつなく、寒寒した青空も澄んでいて、空気が綺麗だった。

待ち合わせは、朝食で有名らしい「喜心」。
お店に着く直前、反対側から歩いてくる女性を見つけた。
タイトなロングダウン、サングラス、ミニスカートを身につけた、懐かしい歩き方の女性。
まさしく今日一日遊ぶともだちであった。
ひとって歩き方は絶対変わらないと思う。思わず「歩き方でわかったよ、変わらないね」と声をかけると、そう?と全然ピンと来てない様子。歩き方なんてじぶんじゃ絶対にわからないのに、わたしはいつも、つい相手に言ってしまう。

お店に入るなり、次々と出される丁寧に作られた朝食。
土鍋で炊いたお米が炊ける前、炊き立て、おこげと段階を経て出されていく。

その合間に湯葉や、魚、漬物が出されながら、わたしとともだちはとめどなく話続けた。
ともだちの旦那さんとの馴れ初め、仕事の話、コロナになった話、新居の話など、話はまだまだ尽きない。
おこげが出たらコースはおしまい。

お店を出たらすぐに向かったのは、銀閣寺である。

哲学の道を歩きながらお互いの3年間について話していた。
ともだちと今回会えてよかったなあと思ったのは、お互いがそれぞれ環境を変えながらそれなりにがんばっていたことがわかったからだ(がんばりすぎず、それなりというのは結構大事な塩梅である)。

前会った時より、更にともだちの日々が充実していることを知れると、より話が楽しくて嬉しくなる。

ともだちが、「銀閣寺、きれいだったけど話しながら歩いてるから、あっという間に見終わっちゃったね」と言った。

次の目的地は、ともだちが一回も行ったことなから行ってみたいという希望で、清水寺に。
本当に行ったことないの?ぜったい忘れてるだけだよとわたしは何回も聞きながらニ寧坂の階段を登っていった。

冬は空が高くて青いからか、清水寺がより壮大に見えて美しかった。

ともだちは念願の清水寺について一言「清水の舞台に飛び降りるどうのって、なんのやつだっけ?」と言った。わたしは、知らんとただけ答え、じゃあお茶しよっかと言ってすぐに降りた。滞在時間30分ほど。

まだ晩御飯には時間があるから、もうひとつ行こうか、ということで朝に通り過ぎた、建仁寺へ。
夏にきたときは、青々としていた庭が、今やその面影がなく侘しい気持ちになった。

中庭を眺めながら、去年の夏ひとりで京都に来た時のことを思い返していた。あのときは仕事を辞めていた期間だったので、青々としていて美しいと思いながらも、次の仕事はどうしようだとか、将来の不安が寄せてくるものを、今は京都だから、帰ったら考えようと必死で押し返していたのだった。
今はどうだろう。ぼんやり考えたのは、明後日、仕事行きたくないということだ。悩みは尽きないものである。
いつのまにか向かいにまわっていたともだちに盗撮されていることに気がつき、我に帰ってともだちの方へ向かった。


夜ご飯は「遊亀」。行き当たりばったりで行ったお店だったがどれも美味しかった。
お酒がすすんでいたからか、写真があまりないのが残念。

「妊活をするから、体冷やしちゃいけないんだよねえ」
ともだちはそう言いながら、熱燗を飲んでいた。
そういう、ともだちの欲張りでお茶目なところが大好きである。

ともだちとは学生時代からの付き合いだ。
むかしから、惚れっぽくて恋多き女であったので、時にはぜったいにやめとけと何度も言って止めた恋愛をしていたこともあった。
結婚した旦那さんはとても温厚で誠実なひとのようで安心をした。
ひとしきり笑って、一瞬静かになったとき、ともだちの横顔を盗み見ると、とても穏やかな表情をしていたのが、印象的であったのと同時に、あらためて良い人と結婚したようで良かったなあと、わたしはほっとした気持ちになった。

シメのお茶漬けの味が薄めなだったので、わたしは醤油を6滴ほど垂らすと、ともだちはかけすぎとゲラゲラ笑った。
濃いめ、とにかく醤油を好む東京の味付けで育つと、京都のシメはたまに薄味すぎるときがあるのだ。修学旅行で茶漬けの味が薄いと醤油をかけて食べていたともだちのことを思い出した。
「鰹のお出汁が美味しいお店が大阪にあるから、一緒に行こうよ。コースで一品ずつ出てくる感じだから、醤油くださいなんて言っちゃだめだよ」とともだちはいたずらっ子みたいに笑いながら言った。受けてたとうじゃないか。じゃあ次回はそこだねと話してお開きになった。

ともだちと解散した時刻は20時になる前。
まだいける。
ひとりではいったのは、コロナの前から来るたびにいこうと思いつつ、タイミングが合わずに行けなかった、「エレファントコーヒー」へ。
暗い細い路地の2階にある喫茶店である。前に歩いていた女の子たちと一緒に来店。
長テーブルのカウンター席は満席であった。おしゃれで若い女の子たちが横並びに座っている。
わたしもミーハーだな、とちょっと恥ずかしくなりながらもコーヒーを待つ。

きた。チョコレート付き。

ア、アロマだ。
飲んだ瞬間に思った。香りが広がっていったのも束の間、キリッとした後味で締め括られる。もう一口味わいたいを続けていくうちにあっという間に底が見えてしまった。
深煎りでパンチが効いているけど、優しい。しっかりダシの味がしながらも、薄味で上品な京料理らしいコーヒーであった。

お酒を飲んだ後で酔っていたからか、わたしは
「コーヒー、とてもおいしかったです。また来ます」と店員さんに言った。内弁慶のわたしは、ふだん絶対そういったことはしない。

店員さんは口元をクッとあげ、しゃがれた低い渋い声で「ありがとうございます。お待ちしてます」とクールに言った。
言われ慣れてる感じがしてさすがだなと思った。
名残惜しい旅行最後の夜を締めくくるのに、最適な一杯であった。


最終日の朝は8時に出かけて、「スパイスゲート」へ朝カレーを食べに行った。
おしゃれな邦楽が爆音で流れる店内。音量合っているだろうか、気になりながら待っていると出てきたのはおしゃれなカレー。

隣にあるスープはカレーになっていて、途中でかけて味と食感の変化を楽しむものだそうだ。
とってもおいしくて、感動した。ひとつひとつの味付けや食感が違くて、食べていくうちに味覚がどんどん冴えていく気がした。
京都は時間がゆっくり流れている気がする。ひとの体感時間がゆっくりだから、時間をかけて凝ったものを作れるんじゃないかな、と勝手に思っている。

チェックアウトまで、ホテルで少し昼寝してお昼頃に新幹線に乗る。
の、前にいづ重の鯖寿司と、西利京漬物を買った。
最初から最後まで食べっぱなしの旅。
今日はこのふたつで、楽しかった京都旅行の余韻にどっぷり浸ろうとしよう。