のぐちよ日記

映画、本、アート、日々のことをちまちまと。

旅にでる 年末年始・東南アジア編/上海空港で起きたトラブルのはなし

だだっ広い上海空港で、乗り継ぎ便が間に合わなかったことを知り、ともだちとふたりでショックを受けていたとき、視界にひとりの日本人女性が入った。

ボブヘアーの彼女は黒のダウン、黒の緩めのスエットのようなパンツを履いていて、バッグパックをもっていたか忘れたけれど、とにかく、いかにも旅慣れをしているような服装だった。

 

スタッフに「あそこの彼女、あなたたちと同じ状況だよ」と言われ、そのひともこちらに気が付き、お互い安堵し自己紹介しあった。

初対面のひとと母国語で会話ができるってだけで、こんなに安心するのかと、そんなことを考えていた。

 

上海へ行ったのは、アンコールワットのある町、シェムリアップ空港へ行くトランジットのためだったのだ。

シェムリアップ滞在後は首都プノンペン、そしてベトナムハノイに行く、一週間がかりの年末年始旅行になるはずだった。

まさか、飛行機から空港まで迎えにくるバスが遅延し、そのせいで乗り継ぎの便を逃すなんて思ってもいなかったのだ。

 

機内でバスがくるまで待機していてほしいと言われた、わたしたちは降りることができなかったと、ぶっきらぼうな空港スタッフに向かって必死に抗議するも、こちらは悪くない、返金はできないの一点張り。

続けて、年末年始は長期休暇をとるひとが多いから、同じ経路のチケットはとれないといい、一番早くて1月3日の便だと言った。

アンコールワットもトゥールスレンもあきらめるしかないのか。

急に体の力が抜けてきたとき、ともだちが「まあ上海に滞在するのも悪くないか」と言った。

わたしたちはおかしくなって笑った。

まあ服は買えばいいし、それに上海在住のともだちにも会えるな。上海も楽しいかも。

ポスターのウェルカム上海の文字が目に入り、摩天楼にいる自分を想像した。

なにかトラブルがあったとき、そのひとの本質が分かるって聞いたことがあるけれど、まさにその通りだ。このともだちとの旅行でよかったと思った。

 

一方、一人旅の女性はスタッフの話を聞いて真っ青な顔をしていた。

わたしとともだちは二人旅だが、彼女はひとりぼっちでそうやすやす受け入れられないだろう。

彼女の状況を詳しく伺うと、結婚前にご両親とカンボジアベトナムへ旅行にいく予定だったという。両親は自分ほど旅行慣れしていないし、別便でわたしが先に到着するはずだったから…と深刻そうだった。

考えてみると(みなくてもほんとうはわかるはずだが)シェムリアップへ行かなければ、プノンペンハノイいきのチケットも全部無駄になり、わたしとともだちは相当な出費になってしまう。

だめだ、楽観的過ぎた。目的を忘れるところだった。今日明日までにシェムリアップへなんとしてもいかなければ。

 

どうしても今日明日でいきたいから、ここからいける経路でチケットをとってくれと、スタッフに懇願した。するとスタッフは「あっちのブースに日本語ができるスタッフがいるから、そっち案内するよ」と教えてくれた。それを早く言え。

 

何とかとれたチケットは上海0時発の便に乗り、朝にクアラルンプールに到着、お昼過ぎにシェムリアップへ到着するスケジュールだった。

 

一人旅の彼女もなんとかご両親へ状況をメールで送ることが出来て一安心。

 

乗れなかったチケットの返金手続きは、日本に帰国してから考えることにして、せっかくだし、出発ロビーで上海料理を食べようと話をしていると、一人旅の女性が遠慮しながら「晩御飯、いっしょに食べてもいいですか」と尋ねてきた。

わたしとともだちは「もちろん!そのつもりですよ」と言い、それから彼女とはクアラルンプール、シェムリアップの空港まで一緒にいた。

 

空港についたら食べてみたいと事前に調べておいた、『上海人家』で小籠包を味わいながら、「一日一回はハプニングがありそうな旅の始まりだね」とわたしが言うと、「明日はなにがあるんだろうね」と、笑いながらともだちは言った。

 

次はシェムリアップ編。