のぐちよ日記

映画、本、アート、日々のことをちまちまと。

近いようで遠い国のともだち

中国のコロナ対策に対してのデモが、上海と北京で起きたと報道されていた頃のはなし。

わたしには留学中に知り合った、中国人のともだちがいる。

むかし以下の記事で書いた、東京に遊びにきた二人のともだち。

https://noguchiyo06.hatenadiary.jp/entry/2018/04/25/192412

 

中国でこんな大々的にデモをやることはないし、まさしく、ともだちが住んでいる場所だったこともあり、心配になって久しぶりに連絡してみることにした。

 

日本人はLINEだが、中国人はWeChatで基本的にやりとりする。

セキュリティも厳しく、一年ログインしていないとアカウントが凍結されてしまう。

なんとかアカウントを作り直し、まずは北京のともだちに連絡してみた。

 

なぜ北京のともだちからなのかというと、リベラルで柔軟な子で、Instagramをやっていて、相互フォローしているからだ。

中国ではInstagramFacebookも基本的に使えないのである(なんでその子がアカウントを作れたのかは不明)。

 

DMで連絡を取り合うと、彼女は「まだコロナ政策で大変だけどなんとか大丈夫。ずっと家に引きこもっているよ」とのことで、無事で安心した。

そのともだち経緯で、上海のともだちのWeChatのアカウントを聞き、早速メッセージを送ることにした。

 

上海に住むともだちは、わたしより少し年上でちょうど一人っ子政策真っ只中生まれ。もちろんその子も一人っ子だ。

学生時代はフランスに留学し、フランス語も英語も堪能。自国の自虐ネタもたくさん言うユーモア溢れる子である。

北京のともだちと同じような文言を送った。

 

が、その子からきた返信は予想外のものだった。

 

「上海のデモ?それってUrumuqI Roadにあったってやつかな?

ぜんぜんニュースになるほどのことじゃなくて、それともだちから聞いてわたしも知ったんだよね。

最近欧米の考え方に釣られる人々がいるから、偏った報道がされてんじゃないかな。

政治はぜんぜん問題ないよ。」

 

わたしはじぶんの手足が氷のように冷たくなっていくのを感じていた。

 

一人っ子政策真っ只中に生まれ、フランスの大学へ留学ができる。

それって中国の富裕層だ。

きっと国政を支持、もしくはご両親が直接関わっている可能性があることを、今更ながらに気がついた。

 

わたしは留学をしたこともあるし、他国の文化を理解し尊重しているつもりだった。

だが、それはある一面、わたしがみているものだけに過ぎかなかったのだ。

 

スクリーン一枚隔てているだけ。その子のことは、わたしはよく知っていると思っていたが、画面の向こうが何も見えなくなったようだった。

ほんとはずっと曇りガラスで、その先は真っ黒で、元々見えてなかったのだ。

 

幸いなことに、この一件で彼女との友情が崩れることはなさそうだった。

実際にあのメッセージがきたあと、

「そっか。中国でそういう、デモとか見たことなかったからびっくりしちゃった。大袈裟にしてごめんね、変わらないことを知れて、今日はよく眠れるよ」

と送りわたしは話題を切った。

そこからお互いの近況報告をし、コロナが落ち着いたらまた会いたいね、買い物楽しかったよと話したり、お互い冗談を言い合い、数日に及んだやりとりが終わった。

 

お隣の国は、物理的には近くても、地球の裏側ほどの距離がある。

多様性って、他国の文化を真に知るって、難しいことなのだ。

コロナが明けたら、上海と北京にいるともだちに会いに行こうと思う。距離が少しでも縮まったと感じられたらいいな。