のぐちよ日記

映画、本、アート、日々のことをちまちまと。

ステラ・マッカートニーの財布が欲しかった

ステラ・マッカートニーのミニ財布が欲しくてたまらなかったのだけれど、6万円以上するから購入は諦めた。

ワンポントである、ゴールドのスターを囲んで、黒のキルティングが縫われている、小さな財布だ。ポップなようで大人っぽいデザインに惹かれた。

 

ステラ・マッカートニーとは、ビートルズポール・マッカートニーの娘がデザインするファッションブランドである。

彼女は動物愛護精神が強いので、本革・ファーはぜったいに使わないのだ。

デザインは素敵だけれど、残念ながらわたしは動物愛が薄く、代わりに黒の本革を愛しているので、その合皮の財布に抵抗があったというのも、買わない理由のひとつだ。

 

現代人のライフスタイルの影響を受けてか、ファッション小物もミニマルが流行らしい。

大きなバッグよりも、以前だったらパーティ用でしか使われていなかったようなサイズのバッグを、日常的に持つことがおしゃれとされているようだ。

今春、東京に遊びにきたおしゃれな北京出身の友達も、「なにがはいるの?」とツッコミを入れたくなるような(現にほかの友達はそういっていた)小さいバッグを持ってきていた。

わたしもその影響を受けて、ステラ・マッカートニーの財布が欲しいと思ったのだった。

 

ただ、小さい財布が欲しかったのはほかにも理由がある。

じつは最近メインのバイトとは別に、ライティングのアルバイトも始めたのだ。

そもそも、メインのアルバイトの社員登用が未定で、金銭的にもう一つ仕事をしないとなあと思ってはいた。

「どうせなら興味ある事がやりたいな」と思い、めでたく雇ってもらえたのだった。

 

新しいことを覚えるときはメモ必須なので、仕事のバッグはノートを二つ持ち歩かなければいけない。重たいバッグをもってうろうろ動くのは大変だ。

わたしは長年使っていた長財布から、ずっと前に買ったペールカラーの小さい財布を引っ張り出し、使うことにした。

 

これが、バッグの軽量化には効果てきめん。

考えれば、いつ行くかわからない、マッサージ店のメンバーズカードは持ち歩かなくても良いし、もっといえば銀行のカードがなくても、デビットカードがあれば、事足りる。「なんで前からこうしなかったんだ」と思ったほどだ。

 荷物と併せて、衝動的にいっていたマッサージの回数も減った。

 

そのとき必要なものだけ持てば良い、というのは勇気がいることだと思う。「もしかして」、「念のために備え」いろいろ持って安心したい、というのは自然なことである。

 

お金を稼ぐためだけではなく、興味のあることに重視しているわたしの仕事スタイルは、ひとによってはとても不思議に映るようだと、かけもちし始めて気付いた。

仲のいい人は面白がってくれたりするけれど、そうではないひとからすると疑問があるようだ。「将来どうなりたいの?」とよく聞かれる。

どうなりたいか、なんて考えていないので、「興味のある仕事をしたいと思っていたら、こうなった。先のことはわからない」と答えているのだ。

けれど、なんでそう聞くかはわかる。

「変な人だ」というよりも、何かしらのストーリーを求めているのだ。

素晴らしい動機と、夢、将来のビジョン。

そういう返答がくると想定していたのに、返ってくる答えは、見た目のまんまのアルバイター。そんなやり取りをするたびに、大したこと考えていなくてすみません、と期待を裏切って申し訳ないような気持ちがしてくる。

 

今は仕事を始めたばかりで、毎日楽しい。知らなかったことを知っていくこと自体が、わたしにとっては一番幸福なことなのだと最近気が付いた。

ただ残念なことは肩こりがひどくて、なかなかこのブログを更新できないことである。それと、本を読むペースが極端に落ちた。

毎日何かしら読んではいるけれど、疲れて気が散って、なかなか読み進められないのが現状である。両立に慣れたら、読書もブログも前と同じペースでやりたいのだけれど。

 

お財布はあんなに簡単で楽なのに、ライフスタイルは好んでミニマムにできない。

 

それに加え、どこからか「このままで大丈夫なの?」という声も耳打ちしてくる。二十代後半、わたしのまわりはどんどん子供を産んだり、どんどん昇進し始めている。わたしと周りとの距離も開いていっている。

そして、「病気になったらどうする?」と、追い打ちで呟いてくるのだ。

 

けれど、人生なるようになる。プランを立てたところで、その通りいくわけではない。

現に一年前のわたしは、仕事をやめるなんて考えもしなかったのだ。じぶんなりに今を楽しんで、頑張れば何かしらになっていくだろう。

 シンプルだけれど、そう思うようにしている。

 

 それに、ステラ・マッカートニーの財布は買えなくても、手持ちの小さい財布に、わたしは十分満足しているのだから。