のぐちよ日記

映画、本、アート、日々のことをちまちまと。

幻のアイスを探して

忘れられないアイスがある。幼稚園の頃、よく食べていた箱アイスだった。中身は、ペンギンとマンボウの棒アイスで、マンボウはどういうものだったか覚えていないけれど、ペンギンはチョコレートと、バニラのアイスだ。お腹がバニラの白で、それ以外はチョコレートの茶色である。

 

幼稚園から家へ帰ってくると、真っ先に冷蔵庫めがけて走り、勢いよく冷凍庫を開けてそれを食べていた。ペンギンが特にお気に入りだったので、箱から取り出すときに、マンボウだと「げっ」と一瞬思ったものである。どちらもおいしいので結局全部食べるんだけれど。

 

残念ながらそのアイスは、いつの間にかスーパーや、コンビニでも見なくなり、姿を消した。

メーカーもブランド名も忘れてしまったけれど、かわいらしい見た目と、あの味がずっと忘れられなかったのである。

あのアイスを思い出すたび、友達に知っているかと聞いていたが、だれ一人覚えていなかった。

あの頃、今か今かと帰宅を待ち望んで、家に着くなり真っ先に食べたものは、他の人にとっては目にもつかないものだったなんて。衝撃だった。わたしにとっては頑張った一日のご褒美だったのである。

メロンアイスも、渦巻きソフトもみんな知っているのに、なぜなんだと不思議に思った。

 

つい先週友達と遊んだ時、懲りずにまた聞いてみた。案の定知らないとの答えが返ってきた。

インターネットに「箱アイス むかし」「ペンギン アイス 箱」「マンボウ アイス」など、どれだけワードを組み合わせて調べてもヒットしない。

わたしのストレスは限界に達した。

 

そうだ、メーカーに問い合わせちゃおう。

 

思い立ってすぐに森永乳業、ロッテ、赤城乳業など、大手菓子メーカー4、5社に電話をかけた。この行動力を他のことで生かせていないなんて、自分でも残念だと思う。

 

ほんとうに問い合わせ窓口のスタッフは偉大だ。こんなしょうもない疑問も丁寧に対応して、きちんと調べてくれる。

申し訳ない気持ちがありつつも、どんどん電話をかけた。

しかし、どのメーカーも「お調べ致しましたが、ペンギン形のアイスは過去製造していません」という回答であった。

がっくり肩を落としたその時、「お調べに時間がかかります。明日の折り返しでよろしいでしょうか」と回答いただいていた、森永乳業から折り返しの電話があった。

だめだったかなあとドキドキしながら電話をとると、簡単な挨拶をしたのちスタッフの方が

「お問い合わせいただいた商品、うちで製造していたのものでした!!」と食い気味で言ったのである。

 

わたしは思わずわーっと叫んだ。こんな早く見つかるなんて。うれしくて胸がいっぱいになった。

 

内容はこうだ。

・該当するアイスは「たのしいどうぶつ」と「うみのなかまたち」の2種類ある。

・「たのしいどうぶつ」は1996年秋から春に作られたもので、パンダとペンギンの形の棒アイスで、チョコレートとバニラ味。

・1997年春から「うみのなかまたち」に製品をリニューアル。オレンジとバニラとイチゴ味になった。1997年いっぱいで生産終了。

 

とのことである。

わたしがマンボウだと思い込んでたものはパンダであったが「たのしいどうぶつ」と特徴や時期は全く一致している。パンダ!そういえばパンダだった!と、言われてからはっきりその形を思い出した。記憶って不思議である。

 

わたしはたった半年間だけつくられたアイスを、ずっと探していたのだ。だから誰も知らないし、調べても見つからなかったのである。

改めて「たのしいどうぶつ アイス」で調べたが、ヒットしなかった。まさしく「幻のアイス」。インターネットの情報は、世の中のすべてじゃないのだと思った。

 もう製造されていないけれど、わたしは再びそのアイスを手に取った気持ちになった。

 

わたしは電話を切る前に「お忙しいところご迷惑をおかけしてすみません」(自覚はあった)と言った。すると、森永さんは

「とんでもございません。弊社の製品をずっと覚えていて下さり、ありがとうございます」と言ってくれた。

ベストアンサー!

これからは、ひいきさせていただきます。