歩き続ける写真家森山大道の写真展「景」について
写真は撮らないし全然わからないけど、アラーキーと、森山大道は知っている。
Nadiffでの森山大道の展示を見た。
入口に森山大道の文章が飾られていて、
「煙草」を「莨」といってみたり、文体は少し純文学的であるが、内容は子供っぽくて面白かった。
アウトローだけど、知的でユーモアのある人物をうかがえる文章である。
真っ白の壁、机で統一された小さな展示空間は、統一され過ぎていて少し居心地が悪かったが、その静かな空間に、モノクロの、アンダーグラウンドな雰囲気の新宿や都心の風景の写真が展示されていて、それがコントラストになっていることに気が付いた。
がやがやした写真に、真っ白な空間は美しく見えた。
その写真たちは黒の濃淡がはっきりしていたので、暗いが悲壮感はなく、芯の硬い鉛筆で描いたようで、女性が自転車にまたぎ漕ぎ出す後姿や、たくさん洗濯物が干されているベランダの写真が、生活感があり、物語性があるなあと思った。
あたりまえのことだけど、片目でレンズを覗いて撮っているんだ、と気づいた。
モチーフが見切れていた写真が多かったからかもしれない。
風景というより、日常的な瞬間を撮ったように感じたからか。
ふと森山大道が、新宿の街を衝動的にシャッターを切りながら、足早に歩く姿が頭に浮かんだ。
かっこいいなあ。
何を着ていたんだろう。デニムにスニーカーかなあ。
構造が凝っている作品、技術のある作品は難しくてなにか言わなくてはいけない気がしてくるが、今回の森山大道の展示はここどこだろう、この写真かっこいいな、というわくわく感があって好きだった。
写真というのは、写真家の視点とそのままの、同じ目線で見れる芸術なんだな、と当たり前のことを知った展示であった。