のぐちよ日記

映画、本、アート、日々のことをちまちまと。

星野道夫のエッセイ「旅をする木」の感想

東京でたくさんの人が働いている今この時間に、遠く、例えばニューヨークで、たくさんの人が寝息を立てているということを考えると、いつも不思議な気持ちになる。 「刻々と過ぎる時間の流れは変わらなくても、それぞれの国の時間が存在していて、たくさん…

よしもとばななの「まぼろしハワイ」を読んでハワイを語る

ハワイに行ったことがあるひと、ハワイが大好きなひとにとっては、その魅力に改めて気付かされる本だ。よしもとばななの「まぼろしハワイ」。 まぼろしハワイ (幻冬舎文庫) 作者: よしもとばなな 出版社/メーカー: 幻冬舎 発売日: 2010/08/05 メディア: 文庫…

フィクションだからって何でもありなのか サマセット・モーム「お菓子とビール」

お菓子とビール (岩波文庫) 作者: モーム,行方昭夫 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2011/07/16 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: 2回 この商品を含むブログ (6件) を見る サマセット・モームの「お菓子とビール」を何週間も前に読み終わったのに、日…

東京で分断される人々 山内マリコ「あのこは貴族」

この前の京都旅行で、生まれも育ちも京都である友達と晩御飯に行った時のことである。 待ち合わせは京都駅で、合流後に河原町へ電車で行くことになったのだが、そのときはまだ、食事をするお店が決まっていなかった。 なぜなら「京都いくから、その日予定空…

カポーティ作品を2冊読んだ感想 (「ティファニーで朝食を」、「カポーティ短編集」)

トルーマン・カポーティ(1924-1984年)の短編集を2冊読んだ。 今となっては映画のほうが有名であろう「ティファニーで朝食を」と、「カポーティ短編集」(河野一郎訳)である。 ティファニーで朝食をは1958年出版、1961年に映画化した。 じつは、数年前に…

NYの「食べる」を支える人々を読んだ感想

パパイヤジュースとホットドックを売る店がニューヨークにあるらしい。 なにその食べ合わせ。牛乳とおにぎりみたい、と思っただろう(わたしはそう思った)。 実際にこの組み合わせはある。しかも今や二代目のアレクサンダー・プーロスが切り盛りしている「…

ポパイ5月号「ニューヨーク退屈日記」とわたしのニューヨーク

正統派ユダヤ人を、ニューヨークに行くまで見たことがなかった。 本で読んだのでもともと知っていた。男性はひげを伸ばし黒い帽子、黒のジャケットスタイルとパンツ、白シャツ、黒の靴。女性はひざ下丈のスカートの格好であるが、本物を見たことがなかったの…

お人よしは報われるの? 遠藤周作「わたしが・棄てた・女」

ラジオで爆風スランプの「大きな玉ねぎの下で」が流れていた。 昔の曲だなあとぼんやり聞いていたんだけれど「ペンフレンド」という歌詞に一瞬どきっとした。聞きなれない言葉は一気に当時の空気を感じる。 その曲よりだいぶ前だけれど、ペンフレンドでつな…

キザだけどかっこいい「こだわり」のエッセイ 伊丹十三「ヨーロッパ退屈日記」

最近「地味弁」が流行っているらしい。 esse-online.jp しきりは最小限、おかずは2品でOK、「インスタ映え」は考えないというのが地味弁の定義らしい。昔いわれた親父弁当である。 少し前まであんなにキャラ弁がもてはやされたのに、真逆のブームが起きるの…

1970年の家族 筒井康隆「家族八景」

書物やテレビドキュメンタリーなどで、激動の昭和といわれるだけあって、昭和の時代というのは年代ごとで、本当にいろんなことがあったんだと改めて気が付く。 1970年、1971年の出来事で調べると、1970年、大阪万博が開催、1971年、沖縄返還…

古本を巡って 浅生ハルミン 「ハルミンの読書クラブ」

都会でビルが建ち並ぶ様子をみて「ビルが地面から生えてきた」と思う人はビル好きで、「ビルが地面に刺さっている」という人はビルに対して否定的な人でしょう。 前者はビルを生き物にたとえるだけの親近感を持っているということだし、後者にとってビルは…

クリエイティブ習慣 メイソン・カリー 「天才たちの日課」

生粋の飽き性である。歯磨きや入浴などの習慣はあっても、やらなければならないこと、学びたいことは全くといって続いたことはない。 食事の時間さえ、規則正しくするのが苦手だ。 習慣にしたいことそのものを忘れてしまうこともしばしば。注意散漫で集中力…

石の上にも三年 鳥飼玖美子「本物の英語力」

「学歴は必要ない」(今SNSで就職活動をしている学生が暴露した、企業の学歴フィルターの件で話題になってますね)、「お金は必要ない」など必要ない、と断言してしまうことは 意見として強いし、ぐっと興味が惹かれる言い方だ。 思わず「それってどういうこ…

小粋な結末の短編集 サマセット・モーム「ジゴロとジゴレット」

小説を読んで何を面白いと思うか読者それぞれだが、巧みなストーリー展開やひねりのきいたエンディングにおいて、モームの右にでる作家はいない。そういった特徴は『月と六ペンス』や『人間の絆』 などの長編にもうかがえるが、とくに短編が素晴らしい。 訳…

人生と美について サマセット・モーム「月と六ペンス」

本屋でちらっと読んで買った本だけれど、絶対に好きな本だなという直感が当たった。 二十世紀前半、イギリスを代表する作家、サマセット・モームの小説である。 月と六ペンス (新潮文庫) 作者: サマセットモーム,William Somerset Maugham,金原瑞人 出版社/…

あの頃の授業と永田豊志 「頭のいい人は『図解思考』で考える!」について

高校生の頃、公民の授業が好きだった。担当は20代後半~30代前半の若い男性の先生だったと思う。 面長でほっそりとした先生で、髪はいつも短くきちんと刈り上げていて、いつみても同じ髪型。 黒板の文字を上から下へ、まっすぐひいて消していくので、そ…

悔しさをばねに偉業を成し遂げた女性の大河小説 渡辺淳一「花埋み」

渡辺淳一の「花埋み」読了ほやほや。本の感想を書きたいと思う。 花埋み (新潮文庫) 作者: 渡辺淳一 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1975/05/28 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: 7回 この商品を含むブログ (6件) を見る 明治時代に誕生した、日本初の…

変わったところと変わらずあるところ 村上春樹「やがて哀しき外国語」

良い時代に生まれたと思う。 日本の「アニメ」が世界的にもてはやされて地位を築いたというのは、良いことだ。 そのおかげで、海外旅行、短期留学中に大きな差別をされた経験は今のところない。 日本出身だよ、と話すと社交辞令も勿論あると思うが相手は「Oh…

グアテマラとコーヒー 片桐はいり「グアテマラの弟」

わたしが、片桐はいりの「グアテマラの弟」をブックカフェで見つけ、手に取ったことは当然のことであった。 毎朝家のコーヒマシーンで淹れるほど、コーヒー好きだからだ。 特にブラックコーヒーで飲むことが好きで、お昼も必ず買うし、休日に友達と遊ぶ時は…

高度経済成長期の失望 三島由紀夫「命売ります」

「命売ります」 タイトルで星新一の作品かと思ったが、かの三島由紀夫…! 命売ります (ちくま文庫) 作者: 三島由紀夫 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 1998/02/01 メディア: 文庫 購入: 2人 クリック: 6回 この商品を含むブログ (34件) を見る わたしの初…

おしゃれになるためには必要な、当たり前のことを学んだ話

生まれて初めてロングヘアーになった。 とりあえず髪を伸ばしてみようと思い、放っておいたら、あっという間に髪ブラができるようになった。 私はマメなタイプではない。髪の扱いが雑草並みである。 髪を伸ばしてみると、意外にパサついたり、シャンプーによ…

吉本ばなな 過去と未来のお話「哀しい予感」

癒されたいとき、頭を空っぽにしたいとき、必ず私は吉本ばななを読む。 先程読了した「哀しい予感」 はっきりいって今回は完全にジャケ買いである。 パステルで描いたみたいな柔らかいタッチ。 ムンクの「思春期」を思い出した。 (Wikipedia 参照) きちんと…