「GIRLS」は自己意識と性について考えさせられるドラマである。
「GIRLS」はニューヨークのブルックリンで、友達とルームシェアをする24歳の女の子、ハンナとその友人たちの恋愛コメディドラマである。
これだけ聞くと「セックスアンドザシティ」や「ゴシップガール」が頭に浮かび、さぞおしゃれで性に奔放な女の子たちの、キラキラした日常を描いたドラマだと思うだろう。
しかし「GIRLS」は全く違う。(正確には性に奔放以外は違う)
1話目で主人公のハンナは、両親からの仕送りを打ち切られてしまうし、ルームメイトのマーニーは学生時代から付き合う優しいボーイフレンドとマンネリである。
ほかに世界を放浪しずっと自分探しをしているジェッサ、ジェッサのいとこで、男性経験はないが、恋愛エッセイやセックスアンドザシティに熱狂するショシャンナが出てくるのだが、どのキャラクターも順風満帆とはいえず低迷している。
夢に向かっているはずなのにうまくいかず「こんなはずじゃない」という自信過剰と恋愛の醜態を鋭く描いたドラマである。
シーズン1は2012年で、ファイナルシーズンの6は2017年に放送された。主役のハンナを演じたレナ・ダナムは脚本・演出・監督を手掛けた新星のクリエイターで、シーズン1のとき、26歳だったそうだ。素晴らしい才能である。
リアルな20代を描いただけではない。ハンナの元彼がゲイであることがわかったり、ハンナの父親が、ゲイだとカミングアウトしたりといった「性」についての話も出てくるのでなかなか奥が深い。
元彼がゲイだったのは受け入れられても、父親はなかなか受け入れられない。理屈で説明できない心理描写も見どころである。
「GIRLS」はセクハラ問題について取り上げている。
ハンナがやっと就職した会社では上司のセクハラが日常茶飯事だった。職場の先輩に相談しても、「別にどってことないよ」と深く考えていない様子に、ハンナは悩む。また、有名な作家が、学生の女の子にセクシャルなことを強要したことがエピソードとして取り上げられている。
自分の扱う「性」と、他人に扱われる「性」。様々な角度から、問題提起しているが重たくなくて面白い。
わたしが大好きなキャラクターはハンナのボーイフレンド、アダムである。
変態だし、奇声あげるし最初めちゃくちゃ気持ち悪い。けれど、次第にハンナに優しく、恰好よく見えてくる。メインの4人だけでなく、彼女たちのボーイフレンドも魅力的である。
アダムを演じたのは、アダム・ドライバー。「スターウォーズ フォースの覚醒」からダースベイダーを引き継いだカイロ・レンの役を演じている俳優だ。
「あ!レンがすごい変態になってる!」とびっくりしたのだが、役が違うだけでこんなに別人に見えるなんて、俳優ってすごいなあ。
ちなみにショシャンナが東京に就職し、働くエピソードがあるのだが、水嶋ヒロが上司役で出てくるのには驚いた。渋谷のトランプルームも出てくるのだけれど、「やっぱり日本て変態のイメージがあるんだな…」と思わせられる話なので、気になった人はぜひ見てもらいたい。
現状に不満を感じるのは「自己評価が高くて、今の自分を客観的に見えていないから」「努力していないから」だなと痛感するドラマである。なんとなくアマゾンプライムをみていたら見つけたドラマだったけれど、わたしには響きました…コーヒー飲んでひと頑張りしよう。