のぐちよ日記

映画、本、アート、日々のことをちまちまと。

華やかな時代の終わり NHKドラマ「平成細雪」

谷崎潤一郎の「細雪」に興味を持ったのは「『婦人公論』にみる昭和文芸史」を読んでからだった。

 

『婦人公論』にみる昭和文芸史 (中公新書ラクレ)

『婦人公論』にみる昭和文芸史 (中公新書ラクレ)

 

学生時代、すこし背伸びをした同級生が「谷崎潤一郎が大好きだ」と言っていたのでもともと知っていた。同級生から言われるまで知らなかった私は、その作家に興味を持ち「痴人の愛」を調べてエロについての作品と知り、嫌悪感を抱いたのだ。

自分でも不思議だけれど、エロを題材にした小説が昔から苦手だ。絵画は全然平気なのに、本では苦手というのはなぜなんだろうか。映画も、生々しいものは苦手。

 

そのエロのイメージを壊してくれたのが「細雪」であった。

この上記リンクの本は、大正~昭和に活躍した作家について書いている批評本である。

大正で巻き起こった新しい文芸、女性解放運動は太平洋戦争の勃発のせいで、鎮火されてしまう。軍国主義が国を覆いつくす中で、すでに作家として名をはせていた谷崎潤一郎は、この関西上流階級の優雅な四姉妹の話を、軍部の邪魔が入りながらも、書き続け、戦後出版したのである。

もちろんすでに名声があったから成し遂げたことといえるけれど、この世情を無視し、堂々とした文豪を尊敬したし、作品にすごく興味を抱いた。

 

いつか読みたいなあと思いながら時は流れ、ついこの前「平成細雪」というNHKドラマでまた出会った。

プレミアムドラマ 平成細雪 - NHK

 

全4話で、時代を大きく平成初期のバブル崩壊後から阪神淡路大震災前に改変している。設定も会社が倒産して没落した一家の内容だ。

原作を知らないけれど四姉妹を演じた女優も、他俳優も素晴らしかった。

何よりNHKドラマは舞台美術と、特に衣装が素晴らしい。

没落したといえど、華々しさが残る設定である。着物がとにかく美しく、光沢が画面から十分伝わる。特にわたしは高岡早紀の大ファンのせいか、次女役の彼女の着ているものが素晴らしくて、うーんいい!最高だなあ!と一人で何回も言っていたほどだ。

1話の三女のお見合いシーンで着ている、エメラルドグリーンのような、緑みがかったブルーの着物は(あれは何色だろう)糸が詰まってて重みがあるようで、光沢があってすごくきれいだった。ほかにも、からし色のカーディガンにサックスブルーのパンツスタイル、小道具の白い日傘までもどれも似合っていて上品で素敵だった。

着物や洋服だけでなく、スーツも完璧。男性が着ていたスリーピースも素晴らしかった。

NHKドラマは大概、時代に忠実な衣装が多く上質なものが多いので、それを見ているだけでも面白い。

一話で会社が倒産し、芸術品を売却するため、鑑定士たちが畳いっぱいに上質な陶器を鑑定するシーンはとても美しかった。

わたしは陶器に疎いのでそれらが本物か、あるいは上質なものであるかわからないけれど衣装を見る限り良いものではないかと思う。

ドラマは面白かったけれど、やっぱり原作を読んでみたくて、さきほど本屋で購入した。

上中下あるので、時間がかかるとは思うけれど読んでみようと思う。

 

ところでわたしは飽きっぽく、なにごとも目移りしがちだ。

細雪を買う際にあわせてサマセット・モームの「月と六ペンス」が目に留まり、購入した。

 

月と六ペンス (新潮文庫)

月と六ペンス (新潮文庫)

 

 表紙も素敵だし、本当は同じ作家の「人間の絆」が本屋にあったら買おうと思っていたけれど、冒頭から面白そうだったので買ってしまった。

まったく買う予定のなかった本だけれど、こちらから先に読み終えそうだ。

本屋だけでなくアマゾンという罠もあるから、どんどん目移りして本を買ってしまうだろう。

昔は良書は少なく、本自体そこまでたくさん出回らなかったようだ。現代のように本がどこにでもあるのも、考えようだ(言い訳)

 

細雪が読み終わるのは、いつになるだろうか。