旅にでる 週末京都編 4
無鄰菴(むりんあん)は、明治・大正時代の元老、山県有朋が建てた別邸である。生前は多忙な公務の間に、しばしば夫人と訪れたらしい。
今やその素晴らしい別邸の庭は、みんなのものになった。有料だけれど、時間が止まったような、小さい自然に足を踏み入れることができる。
わたしは無鄰菴のことを知らなかったのだけれど、知名度は高いらしく観光客で賑わっていた。庭を眺めてリラックスしている外国人観光客が、あまりにすてきだったので、思わず後ろから盗撮。
大々的に宣伝しなくても、いいものは広められるんだなあ。
わたしはゆっくり庭園を歩きながら、山県有朋も同じように歩きまわり、エネルギーを充電したあと、「さーがんばるか」と言って公務に戻ったのかなと想像した。
家とは別にリラックスできる場所があるっていいなと思う。
とはいえ、山県有朋は別邸でも仕事をしていたらしい。
その一部の洋館にはなんと、日露戦争直前の外交を決める、歴史的な会議が行われたのだ(無鄰菴会議)。
テーブルを囲んだのは、伊藤博文、桂太郎、小林寿太郎、そして山県有朋である。
立派な部屋のせいか、重々しい空気が漂っていた。緊張感のある、ひやりとした空間につられて背筋がのびた。
無鄰菴でゆっくりし、徒歩で近くのコンビニへ飲み物を買いに行った時、正面に大きな鳥居を見つけた。「平安神宮」である。ちょっと行ってみようか、とお散歩がてら入ることにした。
平安神宮までの道沿いに、図書館があった。レトロな洋館と京都ってなんでこんなに相性がいいのだろう。
平安神宮は意外にも、明治時代に建てられたそうだ。
境内にある大きな庭園は、植物がめいっぱい、のびのびと成長しているようであった。植物園みたいだ。
庭師たちが丁寧にお世話をしているような無鄰菴とは、ちょっと違う雰囲気だった。
貴船神社の川床での食事はかなわなかったけれど、鴨川を眺めながら食事をすることはできた。
「東華菜館」で、京都滞在の食事を締めくくった。
古い洋館のような建物に、中国風のインテリアが配置されている、異国情緒あふれる中華料理屋さんである。
フロアに案内されるエレベーターは日本最古のものらしい。スタッフの方が端にあるレバーを引くと、動くのだ。鉄のジャバラ式のドアがついた、古きよきアメリカ映画に出てくるようなエレベーターに興奮した。
イギリス領時代の香港って、こんな感じだったのかなあと想像がふくらんだ。
お店の雰囲気は最高だったけれど、もちろん食事もだった。こんなおいしい中華は初めてかもしれない。
良い油をつかっているせいか、全然脂っこくないのだ。
お気に入りは水餃子。つるっとした、分厚くないのに噛み応えのある、不思議な皮と、それに包まれたジューシーな具に顔がほころぶ。
つるつるの水餃子、東京でも売ってくれないかなあ。
旅行に行く前、知り合いやともだち数人に「夏の、灼熱の京都に行くなんて」と驚かれた。なぜ驚かれたのだろう。不思議である。
だって、夏の京都はとても楽しい。暑ければ暑いほど、夏を感じれる。
四季のコントラストが強いほど、季節それぞれの風物詩が生まれるのだ。
夏のおわりにぴったりな旅行だった。
「あっついなあ」と文句を言いながら、あの天国みたいな砂浜をぶらぶら歩きたい。