旅にでる 週末京都編 3
鞍馬から叡山電車にのり一駅もどると、貴船口駅につく。貴船神社への最寄り駅である。
電車から降りると、川が流れていた。
澄んだ水に浮かれて、少しだけ川遊び。
着ていた汗だくのTシャツとスキニージーンズが湿気でぴったりくっついた。
汗ばんで気持ち悪いという感覚よりも、ひんやりとした空気を感じてむしろ気持ちが良かった。
歩き出すと、また暑くて汗だくになったけれど。
駅から貴船神社へは一本道が通っている。
右手に川、左手につんつんした杉の木々の山がある、その坂道をずっと歩いていく。どちらかに見とれすぎると、バスや車がやってきたとき、端によれないので前方も注意しなければいけない。道幅が狭いのだ。
わたしたちは一列になって歩いた。小学校の頃の、集団下校を思い出した。
貴船神社はまだかとまだかと歩いていると、川床が見えてきた。
すだれが囲われていて、店内が分からないようになっている。
ほんとうは川床で食事をしたかったのだけれど、そうめんで一万三千円だったのでやめておいた。
いつかまたきた時に、のれんをくぐりたい。
そのときはもっとお金に余裕があって、「一万三千円のそうめん」の価値を理解していたらいいと思う。
貴船神社はこじんまりしていて、神秘的だった。
壮大というわけではないけれど、大昔から山の精霊たちが守ってきたといった感じがした。優しくて自然に愛されているのだ。
澄んだ川の冷気がそのまま上昇し気体になって、神社を満たしている。
境内のベンチに座ると、その空気に包まれてしまって、なかなか立ち上がれなかった。
本殿は改築して新しいらしく、ヒノキのいい匂いがした。
貴船神社はヒノキと、葉っぱと川の匂いがする。
暑さをどこかへ置いてきたような空間だな、と思ったのと同時に、冬だったら侘しいのかもしれないなあと思った。こんなに夏にぴったりの神社ってあるのだろうか。
大昔の人々が、ここに神社を作ったのは当然のことだなあと思った。
夜。お気に入りの本屋さんである、恵文社にめいっぱい入り浸ったあと、そのちかくにある、下鴨神社にチームラボのイベントがやっているとのことで、行ってみることにした。
鞍馬をハイキングし貴船神社へいき、足はパンパン。恵文社で本を吟味したおかげで集中力は切れ、心身ともにふらふら。
こんなに観光で動き回った旅は、久しぶりだなあと思った。
元々疲れやすいので、旅のプランはできるだけ余裕をもたせて組むのだ。
こうなったら、詰め込めるだけ詰め込んでしまおう。半ばやけくそである。
下鴨神社は六月にひとりで訪れていたが、チームラボの手掛けた照明の仕掛けで、その時と全く違う雰囲気になっていた。
恵文社からタクシーで向かうとき、運転手のおじさんが「今日ここらへん若者ばっかや」とぼやいていたのだったが、納得した。実際、夜の下鴨神社は若者であふれていて、クラブ会場のようだと思った。ミラーボールはどこだ。
大きな鳥居の方向から光のウェーブがやってきて、並木道の色を次々変えていく。
その手前には丸い、卵型の照明がところどころにあって、光っていた。
上を見て歩いていたら、ともだちを置いてきてしまっていたことに気が付いた。振り返るとカメラを構えているともだちが、真っ赤に染まっている。
あ、と思い、また正面をむく。すると人々の顔は赤の次にやってきた、また違う色に染まっていく。
そうか、神社や木々だけじゃなくて、自分たちもスクリーンなんだ。
傍観しているだけのようで、自分たちも知らないうちに作品の一部になっていることに、気が付いたのである。
面白い企画だなあと思った。
卵型のオブジェではなく、丸型のものも置かれていた。それがどういう意味なのかわからない。けれど、ともだちが「爬虫類の卵って丸型だよね」と言った。なるほど。モチーフとしては卵で間違いないようである。
会場にいた人々は、カメラやスマフォから、光に照らされる神社やオブジェを写真にしようと奮闘していた。もちろんその中にわたしも含まれる。
けれど、ところどころで聞かれる「だめだ、うまくとれない」「ぶれた」「暗いな」の声。きれいだから写真に収めたい。それなのに、うまく撮れなくてもどかしいといった声色だ。
フォトジェニックを狙ったイベントなのに、うまく撮れない。
チームラボっていじわるだな。
ちょっとしてやられた気持ちだけれど、体験型アートの一部になったのはむしろ光栄だなと思った。
次回でラスト、最終日のこと書きます。
チームラボのリンク↓
楽しませてくれてありがとう。