のぐちよ日記

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ウェス・アンダーソン最新作「犬ヶ島」感想

だいぶ書くのが遅くなったけれど、ウェス・アンダーソン監督の最新作について書きたいと思う。「犬ヶ島」というストップモーション・アニメ作品である。

 

わたしがウェス・アンダーソンを好きになったのは、グランド・ブタペスト・ホテルを見たことがきっかけだった。

内容はもちろん面白かったけれど、なによりも、アール・デコの雰囲気、エゴン・シーレによく似た絵画が出てきたり、ミレーナ・カノネロが衣装担当するなど(なんと、スタンリー・キューブリックの時計仕掛けのオレンジの衣装も!)、もうどれもこれもがツボ。

しかもその中にソフィア・コッポラ監督作品の「マリー・アントワネット」で使われたようなピンク色が建物や随所に使われているところに、現代的なオリジナルを感じてすっかりファンになってしまった。

映画の世界観を作るのがピカイチな監督として、目が離せなくなっていたのだ。

  

犬ヶ島は、今から20年後の「メガ崎」を舞台である。

メガ崎の小林市長は、ドッグ病が流行ったことをきっかけに、人間への感染を恐れ、「ゴミ島」へ犬たちを追放してしまう。

桃太郎では鬼ヶ島へ鬼を退治しにいくが、犬ヶ島では犬が追放されるのである。

小林市長の養子である小林アタリは、追放されてしまった自身の番犬、スポッツを連れ戻そうと飛行機を盗み、犬ヶ島へ着陸する。

スポッツと同じように捨てられてしまった犬たちは、アタリが憎き人間であるにも関わらず、「自分の飼い主は犬が島へ探しに来てくれなかったけれど、この少年は探しに来たのだ」と感動し、スポッツ探しに加担する、という内容である。

 

目的のスポッツ探しと並行して、小林市長の犬永久追放の陰謀が進んでいく。どんどんストーリーに入りこめて、最後まで笑える映画だ。

けれど、 ところどころブラックすぎて笑うのがためらうような、シュールなギャグがちりばめてあった。相変わらずである。

声優はビル・マーレイエドワード・ノートンスカーレット・ヨハンソンなどが担当していて豪華すぎて笑ってしまう。ちなみに、オノヨーコや渡辺謙など、日本人キャストも担当している。

 アニメーション作品だけれど独特過ぎる雰囲気とジョークなので、子供はつまらないかもしれない。

 

 

 犬ヶ島は、小津安二郎監督や黒澤明監督の映画や宮崎駿のアニメと、浮世絵などの日本文化をイメージしてつくられたとのことだ。特に50年代の日本の影響が強いらしい。

ほんとうにウェス・アンダーソンがすごいと思うのは、いかにもな日本のイメージをそのまま使うのではなくて、きちんと彼の世界観に落としこんでいて、それが自然であるということだ。

パラレルワールドの日本を見ている感覚になる。

 パンフレットに「昔の人が考えた未来を描いた」と書いてあったけれど、まさにその通りだと思った。そういった柔軟な視点を持てるのも、ウェスアンダーソンの魅力である。

 

 50年代といえば、以前ここで書いた遠藤周作の「わたしが・棄てた・女」がまさにその時代の東京が舞台の小説だ。

戦後のカオスな時代。変な商売もたくさんあって(それは今もか…)貧乏で決していい時代とは言えなかったと思うけれど、どこかかっこよく見えてしまうのは、今ではもう失ってしまった、何かがあったかもしれないなあ。

 

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