のぐちよ日記

映画、本、アート、日々のことをちまちまと。

わたしのピカソ愛

これいいなあ、と思ったイラストや絵画をよく見るとピカソであるものが多い。

ある時は、箱根の美術館に行った時。回転式のラックにささっているポストカードを見ていると、クリーム色の紙にペンで一筆書きされたようなタッチ、女性が寝転がっている構図のカードを見つけた。さらっと書いた雰囲気と無駄のない線に惹かれた。

裏をみるとあら、ピカソ

すぐにこれ誰かに送りたいなと思い、京都に住んでいる友達にメッセージを書いて送った。喜んでくれて、和紙のような素敵なポストカードでお返事をくれた。普段は友達にカードや手紙を送ることはしないけれど、誰かにこの素敵なカードを送って喜んでみたいなと思わせてくれたのはピカソのおかげだ。

またある時は、ニューヨークのメトロポリタンミュージアムに行った時。印象派や20年代初頭絵画が飾ってある展示場にいたときである。

メトロポリタンミュージアムはとにかく作品数が多い。ひとつひとつ見ていくのはすごく時間がかかるので、私はたまに行って、気になる企画展やお気に入りの展示場だけ見るようにしていた。

モネやセザンヌが並ぶ中、ぐっと引かれる絵画があった。タイトルも忘れてしまったが男性で派手な服装をした、ピエロのようなイカサマ師のような男の絵で、ちょっとタッチはロートレックに似ていた。

おっと思って近づいてって作者名を見ると、ピカソ

わたしのピカソのイメージ(泣く女や青青の時代のような絵画)ではなく、見たこともない作風だったので驚いたし、この作品数のなかで輝きを放ち、目を引かせるのは天才だなあと思った。

ただ、ピカソはものすごい作品数を残しているけれど、この絵、あの画家のあの作品と似てるなあと思うような作品もある。ただ、すこし似ていたとしても、必ずピカソの要素があって、オリジナルティを感じる。何をしても俺流にしてしまう画家である。

 

ピカソの「アヴィニョンの娘たち」をMOMAで見た時はそれはそれは感動した。大きなキャンバスに娘たちが裸でそれぞれポーズをとっているのだが顔もポーズも時空が違うかのように破片で組み合わせているような作品である。キュビスムの始まりと言われたこの絵画は、幾何学的で新しいのに女たちの顔がアフリカの仮面のようで、すこし原始的な雰囲気もある。すごく革新的な絵である。

ちなみにピカソMOMAにも興味を持ったのは原田マハの「楽園のカンヴァス」という小説を読んでからである。

 

楽園のカンヴァス (新潮文庫)

楽園のカンヴァス (新潮文庫)

 

ニューヨークの学芸員であったティムはあるスイスの豪邸に呼ばれる。持ち主の大富豪が見せてきたのはアンリ・ルソーの「夢」。MOMAにあるあの名画がこの世に2枚ある。持ち主は贋作か本物か、判定してほしいといい、ヒントに謎の古文書を渡された。ティムとともに呼ばれていた、ライバルは日本人の学芸員の早川織絵。7日間のリミットまでに絵画の謎を解き明かす、という小説である。ミステリーになるのだろうか。最後はうんと感動させられた。作家の方が学芸員をされていたとのことで、MOMAについてもアートについてもすごく勉強になる本だ。

 完全にわたしのピカソ・ルソー好きはこの小説からきている。

この本を読んで「ぜったいMOMAにいつか行ってやる」と思い実現した。わたしはいつもフィクションに突き動かされるようで、自分でもロマンチストだと思う。

 

ピカソの作品はすこしだけ日本に来るけれど、個展はほとんどやっていない。人気はないのだろうか。いやそんなことはない。だって、この前もカフェにピカソの絵が飾られていたのを見たのだから。絶対展覧会を待っている人は多いはずだ。

いつでもきてほしいのに。海を越えてくるのを待ちわびています。