のぐちよ日記

映画、本、アート、日々のことをちまちまと。

好きなものって全部つながってるよね、という話

最近お昼に「越路吹雪物語」というドラマがテレビでやっている。

越路吹雪の伝記的ドラマで、瀧本美織大地真央がそれぞれ、時代を演じるらしい。

 

瀧本美織が演じている話を1話だけ見たが、あんまりしっくりこないな、と思った。

歌も演技も申し分ないのだが、その歌い方が上品すぎて、あのけたたましく情熱的に歌う越路吹雪のイメージと合わないのだ。

 

越路吹雪とは昭和のシャンソン・歌謡曲の歌手である。

宝塚出身だが破天荒な人だったらしい。

チェーンスモーカーでショートヘアーがトレードマーク、長身で面長の女性だ。

 

わたしの母は昔から越路吹雪の大ファンで、よく家に彼女の曲が流れていた。

哀愁があるのだが、わたしはどうもこの歌手が好きではないのだ。

越路吹雪のどこが好きじゃないか、と言われてもわからないが、昭和歌謡を感じる歌い方だからかもしれない。それでも、とても歌のうまい歌手には変わりないけど。

わたしにとっては、越路吹雪が尊敬し、日本語でカヴァーした「エディット・ピアフ」のほうが大好きだからという理由が大きいかもしれない。

 

エディト・ピアフについては、この映画をみたら十分に理解できるのではないかと思う。


映画「エディット・ピアフ 愛の讃歌」日本版劇場予告

 

エデット・ピアフの伝記映画である。ここで、エデット・ピアフについて少し説明したい。

 

1915年、エディット・ピアフはパリの貧しい地区で生まれ、生活のため路上で歌っていたところ、スカウトされシャンソン歌手となった。

ちなみに、エデットは本名だが「ピアフ」は芸名である。

ピアフはフランス語で「小雀」というらしく、そこが名前の由来だ。

小柄な体から、情熱的にのどを震わせ歌う歌は魂をこめて、というよりも魂をすり減らしてという表現がぴったりかもしれない。燃えるように生きた歌手だからだ。

エディト・ピアフは多忙のせいか、モルヒネ中毒にかかり、その後癌で47歳で亡くなる。彼女は生涯に2度結婚を経験しているのだ。

まさに短命でドラマチックな生涯、最期は燃え尽きたのである。

 

映画予告で流れる曲が彼女の代表曲のひとつ「愛の賛歌」である。

越路吹雪がカヴァーした愛の賛歌があるが、こちらはより純粋な、初恋の雰囲気があるが原曲はその逆。これがもう、破滅的で情熱的なのだ。

もともとはエデットピアフの恋人に向けての曲らしいが、その恋人も、そののち飛行機事故で亡くなってしまうため、この曲はより一層悲しく、深く感じる。私は何度聞いてもこの伴奏を聞くと胸が詰まる思いがしてしまう。

エデット・ピアフと越路吹雪のそれぞれ違う「愛の賛歌」を聴き比べるのも面白いかもしれない。

 

エディット・ピアフ」を演じたマリオン・コティヤールは素晴らしい女優だ。

彼女の主演映画はいくつか見たことがあるが、気品があって演技も素晴らしいので、安心してみれる。

その作品のひとつ「エヴァの告白」のパンフレットに、彼女のストイックな役作りが書かれていたので、よく覚えている。

エヴァの告白という映画は、1921年のニューヨークが舞台の悲劇作品である。

マリアン・コティヤールが演じる主人公はポーランド人の移民、という役なのだが、フランス人の彼女はなんと、ポーランドとドイツなまりの英語を習得して演じたらしい。

なぜポーランドとドイツなまりなのか、というと、その役の故郷がちょうど両国の間に当たるそうだ。

あっぱれ。エディット・ピアフもとてつもなくリアルに再現されている。

 

わたしがパリ旅行に行ったとき、カフェでエデット・ピアフが流れていて、それには本当に驚いた。いうなればおしゃれな今風のカフェに演歌が流れているようなものである。

今日も自分の曲が町に流れているということは、歌手冥利に尽きるのではないかと思う。

 

冒頭で越路吹雪のことをすこしけなしてしまったが、好きな曲もいくつかある。「ろくでなし」も好きだが「イカルスの星」が一番好きだ。あまのじゃくで申し訳ない。

しかもイカルスの星は、私の大好きな漫画家、ジョージ朝倉の「恋文日和」に「イカルスの恋人たち」という話があって、イカルスの星の曲がテーマとして使われているのだ。

正直なところ、この話が大好きで曲が好きになったのである。

 

 

 

本当は1巻を載せるべきなんだけど、イカルスの恋人たちが2巻だからこちらを載せました。

手紙にまつわる短編少女コミックで、全三巻。映画化もされた作品である。(原作イメージを壊したくないので、映画は見ていない)

 

好きになるものは、すべてつながっている気がしてならない。